Joan Severa, Dressed for the Photographer, Ordinary Americans and Fashion, 1840-1900, Kent State University Press, 1995. 本書はジョーン・セヴラ女史が30年と言う歳月をかけて取り組まれた大作で、アメリカの服飾研究者から高く評価されている。彼女はウィスコンシン歴史協会(the State Historical Society of Wisconsin)の学芸員を30年にわたって歴任する傍ら、アメリカ服飾学会の理事や多くの博物館のコンサルタントとして活躍してこられた。
本書のサブ・タイトルに”Ordinary Americans”とあるが、本書は庶民、すなわち、ミドルクラスや下層のアメリカ人たちが、ダゲレオタイプの銀板写真技術が導入された1840年から1900年の60年間に、記念写真にどのような装いでおさめられたのか、彼らのバックグランドや服装のディテールの分析も含めて、マテリアル・カルチャー(物質文化)の視点から書かれた大作である。
上流階級を対象とした服飾研究書は、欧米において多数見られるが、「アメリカの庶民」の衣服研究を行った研究書は大変、稀少である。掲載された写真は何と277枚。服飾の専門家の視点で写真に写った服装が的確に分析されている。
19世紀アメリカ合衆国の1840年から1900年の60年間を考察対象とした本書は6章から構成され、各章の前半では、時代背景と女子服、男子服、および子ども服のファッション傾向と各アイテムの特徴がまとめられている。後半では、10年間隔で、ジョーン・セヴラが全米から収集された写真が掲載され、服飾の専門家の視点から、目を見張るような克明な解説が付けられている。
本書のガイドブック、濱田雅子著『写真が語る近代アメリカの民衆の装い―Guidebook of Joan Severa: Dressed for the Photographer, Ordinary Americans and Fashion, 1840-1900』が株式会社PUBFUNから出版されました。
アメリカの服飾に限らず、多民族の服飾文化(ヨーロッパ諸国、アジア諸国の服飾文化)に関する研究発表や講演、書評会、西洋服飾史・民族衣装セミナー、ワークショップ(デザイン画、手芸、コスチューム・ジュエリー制作など)を行って参りましたが、2020年より、新型コロナウィルス感染症の蔓延により、上記の様な集いが持てなくなっています。そのため、会報発行、および、オンライン講座による持続可能な活動を行っています。下記より、お気軽にお問合せ下さい。ただし、研究会の趣旨に沿わないお問合せには、対応できかねます。