濱田雅子の服飾講座「服飾からみた生活文化」       シリーズ6

日時:2015 年 6月 13 日(土) 1:30~3:00

場所:京都府国際センター 京都駅ビル 9 階  

Tel & Fax 075-342-5000

 

タイトル:小説『ルーツ』のなかのクンタ・キンテの服装をめぐって

 

 本報告は濱田の博士論文が元になっている『黒人奴隷の着装の研究―アメリカ独立革命期ヴァージニアにおける奴隷の被服の社会的研究―』(東京堂出版、2002)の一部の内容紹介である。濱田は本書のあとがきに、本書執筆の動機について、以下のように書いている。

 本書執筆の動機は、アメリカ黒人作家アレックス・ヘイリー作、安岡章太郎、松田銑共訳の『ルーツ』(社会思想社、1977年)にある。ヘイリー氏がアフリカのジュフレの村をたずね、みずからの先祖を探しあて、7代200年を描いた小説『ルーツ』は、世界的なベストセラーとなり、ピューリッツァー賞を受賞した。この作品はテレビドラマ化され、話題作として脚光を浴びた。作品中の「主人公のクンタ・キンテが着ていたものを考証できるのは、歴史学と服飾史学の研究に従事しながら、アパレル産業の現場で実際の服作りに携わって来たあなたしかいないですよ。」とアメリカ黒人史のご専門家で、神戸大学文学部の恩師である故本田創造先生から「奴隷の着るもの・・・・」研究をお勧めいただいた。これは1985年ころのことである。「奴隷の衣服・・」とおっしゃらなかったのが印象的で、今も鮮明に記憶している。師のご助言こそ、私が「奴隷の着るもの」の解明に取り組みだした直接的な動機である。私自身は、このようにお勧めいただく前に、『ルーツ』の翻訳書を読んだり、テレビドラマをビデオで観たりしていたのだが、小説やテレビドラマのなかの奴隷の被服描写に疑問をいだいていた。 

  濱田は博士の学位を取得するに先立ち、ポルトガルのリスボンで開催されたICOMの服飾に関する国際委員会で”Clothes for Slaves in Virginia in Revolutionary America,”というテーマで英語で研究発表を行った。発表後、意外にも会場から割れるような拍手が湧き起こった。大きな戸惑いを隠せなかった。そして、会議終了後、「貴女の研究内容をハリウッドにもって行くといいですよ」とドイツ人女性から言われたのである。彼女の言葉を聞き、なぜか胸がドキドキした。

  ICOM(International Council of Museums:国際博物館会議)は、1947年に創設された国際的な非政府機関である。世界137カ国(地域を含む)から約3万人の博物館専門家が参加している。地球規模で博物館と博物館専門家を代表する団体として、UNESCOと協力関係を保ち、国連では経済社会理事会の諮問資格を有している。ICOMには、国別に組織された114のNational Committees(国内委員会)と、博物館の様々な専門分野に即して組織された31のInternational Committees(国際委員会)がある。それぞれに年次会合などを開催し、博物館にかかわる情報の交換や知識の共有が図られている

  濱田が研究発表をしたのは、上記の31の委員会の中の服飾に関する国際委員会である。その後、ハリウッドには行っていないが、今回、報告させていただくのは、衣服の実物が残存していない奴隷の被服の実態に関する問題である。

   さて、濱田はこの実態をどのようにして解明したのか。この問題に対する答えは、6月13日のGlobal Sessionでのお楽しみということにさせていただこう。本報告が『ルーツ』の主人公のクンタ・キンテが着ていたものを考証する手がかりになれば幸いである。

                     (文責 濱田雅子)